はじめに
当院には多くの保育士さんや幼稚園教諭の方にご来院いただいております。「子どもの抱っこで腰が痛くて」「中腰での作業が続いて立ち上がれない」といったご相談が非常に多く、中には「朝起きた時から腰が痛くて出勤するのがつらい」という深刻な状態でお越しになる方もいらっしゃいます。
子どもたちのために日々奮闘される保育士・幼稚園教諭の皆様に、職業特有の腰痛の原因と効果的な対策についてお話しします。
保育士・幼稚園教諭に腰痛が多い理由
1. 頻繁な抱っこ・おんぶ動作
乳幼児の抱っこは1日に数十回から数百回に及びます。特に0歳児クラスでは、泣いている子を抱っこしながら他の子のお世話をすることも多く、腰への負担は相当なものです。
2. 中腰姿勢での作業
- 子どもと同じ目線でのコミュニケーション
- おむつ替えや着替えの介助
- 遊びの見守りや片付け
- 食事の介助
これらの作業はすべて中腰姿勢で行われ、腰椎への負担が集中します。
3. 不安定な姿勢での作業
子どもの動きに合わせて体をねじったり、片足立ちになったり、通常では取らない不自然な姿勢が多くなります。これにより腰周りの筋肉バランスが崩れやすくなります。
4. 重い物の持ち上げ
- 寝ている子どもの移動
- 遊具や教材の準備・片付け
- 布団の上げ下ろし
- 給食の配膳準備
5. 長時間労働と休憩不足
子どもから目を離せない環境では、十分な休憩を取ることが難しく、疲労が蓄積しやすい状況にあります。
6. 精神的ストレス
子どもの安全への責任感や保護者対応などの精神的負担も、筋肉の緊張を引き起こし腰痛の一因となります。
実際の症例から
ケース1:新任保育士さんの急性腰痛
4月に新卒で保育園に勤務し始めたKさん。慣れない抱っこ動作と中腰作業で、入職1ヶ月後に激しい腰痛を発症。「子どもを抱っこするのが怖くなってしまった」と涙ながらに相談されました。
ケース2:ベテラン幼稚園教諭の慢性腰痛
職場復帰を合わせ15年のキャリアを持つFさん。長年の蓄積疲労で慢性的な腰痛に悩まされ、「朝起きる時が一番つらい」「骨盤ベルトが手放せない」という状態でした。
ケース3:産休明けの保育士さん
産休・育休明けで職場復帰したOさん。出産で体幹筋力が低下している中、以前と同じ業務をこなそうとして腰痛が悪化。「自分の子どもすら抱っこするのがつらい」とご相談いただきました。
腰痛予防のための対策
1. 正しい抱っこの方法
- 子どもに近づいてから抱き上げる
- 膝を曲げて腰を落とし、太ももの力を使う
- 子どもを体に密着させてから持ち上げる
- 抱っこ中は背筋を伸ばし、腰を反らしすぎない
2. 中腰作業の改善
- 可能な限り椅子や台を使用
- 片膝をついて作業する
- 作業時間を短時間に区切る
- 定期的に背筋を伸ばす
3. 体幹筋の強化
- プランクやデッドバグなどの体幹トレーニング
- 骨盤底筋群の強化
- 腹式呼吸の練習
4. 職場での工夫
- 抱っこやおむつ替えを複数人で分担
- 腰痛ベルトの着用
- 休憩時間での軽いストレッチ
- 同僚との情報共有と相互サポート
5. 日常生活での注意点
- 十分な睡眠で疲労回復
- 湯船にゆっくり浸かって筋肉をほぐす
- 栄養バランスの取れた食事
- 適度な運動習慣
簡単にできる腰痛予防ストレッチ
1. 腰回しベーシック
立った状態で腰に手を当て、ゆっくりと腰を回す。左右各10回。
2. 膝抱えストレッチ
仰向けに寝て、両膝を胸に引き寄せる。30秒間キープ。
3. キャット&カウ
四つ這いになり、背中を丸めたり反らしたりを繰り返す。10回程度。
4. ヒップフレクサーストレッチ
片足を前に出し、後ろ足の付け根を伸ばす。左右各30秒。
こんな症状があったら早めの受診を
- 足にしびれや痛みがある
- 朝起きた時の痛みが強い
- 子どもを抱っこできないほどの痛み
- 痛みで夜眠れない
- 3日以上痛みが続く
当院での治療アプローチ
保育士・幼稚園教諭の方には、職業特性を理解した治療を提供しています
- 骨盤・腰椎の調整
- 体幹筋強化のための運動指導
- 日常動作の改善アドバイス
- テーピングや腰痛ベルトの指導
まとめ
保育士・幼稚園教諭の皆様の腰痛は、職業の特性上完全に避けることは困難ですが、適切な知識と対策により大幅に軽減することができます。子どもたちの笑顔のためにも、まずはご自身の体を大切にしてください。
腰痛でお悩みの際は、我慢せずに早めにご相談ください。皆様が健康で長く子どもたちと向き合えるよう、全力でサポートいたします。
*※症例については、プライバシーに配慮し、特定できない形で紹介しております。
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